手遅れの梔子

朝にはもううんざりで

世界からとうに見放されてたんです

隣には君だけで

なんとか繋ぐ事が出来たんだ

 

2人して 逃げ出して

誰も彼も知らない国まで行こう、と

鱗が剥がれてしまったら

もうそこには何も無いから

 

なんて素晴らしい展望台

まるで僕達の未来みたい

無口な君が無垢な笑顔で頷いてくれた

 

『向こう側で 一緒に遊ぼう

溶け合って 夜の魚になって

行き場の無い 世界の隅っこで

やけに明るい あの星は誰?』

 

朝が待ち遠しくて

眠るのが勿体無いくらいに

隣には君が居て

それすらもうどうでも良くなった

 

「足が痛い」と引き摺って

僕は次の景色が早く見たいのに

「嘘つきめ」と早足で

君との距離はどんどん離れた

 

なんて素晴らしい展望台

まるで僕の未来みたい

無口な君が無垢な笑顔で俯いてしまった

 

 

振り返り 君が居ない

突然 不安が胸の中、転がって

冗談はやめてくれ

横たわる君を見つけた

 

ポケットに便箋が

「あなたと見た景色を忘れない」

「隣に居れて良かった」と

「荷物になって本当にごめん」と

 

なんて色の無い展望台

まるで僕の未来みたい

無口な君の無垢な寝顔に静かに添えた

 

『巻き戻して もうそれだけなんです

あの日居た あの展望台へ

返せない 君はくれたのに

やけに明るいあの星は誰?』

 

『巻き戻さないで あなたはくれた

あの日見た 2人だけの未来を

最後まで言えなかったな

「私は幸せ者でした」』